生成AIの普及で「SEOはオワコン」と言われる今、本当にSEOは終わったのでしょうか。従来のメリットに加え、AI時代だからこそ享受できるSEOのメリットを、実体験と最新の検索動向をもとに4つの視点で整理します。

生成AIが生活インフラの一部になりつつある昨今、情報収集の手段も大きく変化しています。
検索エンジンで調べるのではなく「生成AIに質問して答えを得る」という行動が日常化する中で、これまで見込み客を獲得する有効な手段とされてきたSEOに対して「もう必要ないのではないか」という声が聞かれるようになりました。その延長線上で「SEOオワコン」「SEO死亡説」といった刺激的な言葉も目立つようになっています。
では本当に、AI時代にSEOは役割を終えたのでしょうか。検索体験が変わる中で、SEOはどのような意味を持ち、どんな価値を発揮し続けているのか。今回は、AI時代だからこそ考えられるSEOのメリットについて整理していきます。
SEO死亡説、オワコンは本当?
以前の記事「AI時代のSEOはオワコン?その真実と「違います」と言える4つの理由」でも触れましたが、個人的には「SEOはまだまだ健在」と考えています。
実際、私がSEO支援を行っている複数のサイト(9サイト)を見ても、AI時代に入ってから目立ってアクセスが減少している事例は多くありません。中には、むしろ安定的に伸びているサイトもあります。
一方で「辞書系サイト」や「まとめサイト」については、検索結果上部に表示される「AI Overviews」の影響を受け、クリック率が大きく低下しているというデータも報告されています。
確かにユーザーの情報探索が生成AI上で完結し、サイト訪問自体が減っている側面は否定できません。ただし、企業やサービスの認知獲得という観点では、質の高いSEO対策が施されたウェブページほど、AIに参照・採択されやすいという傾向も見えてきています。つまり、SEOという「手法」そのものが無効化されたわけではありません。
さらに最近では、定義や概要はAIで素早く確認し、そのうえで検索順位上位のページを読み込み、より深いインサイトやユニークな視点を得ようとするユーザー行動も増えています。情報探索が、AIと検索を併用するハイブリッド型へ移行していると言えるでしょう。
実際、AI検索トラフィックが増えているからといって、SEOトラフィックがその分減少しているわけではなく、ユーザーは「どちらか一方」ではなく「両方を使う」ケースが増えている点も、非常に興味深い変化です。
従来のSEOのメリットをざっくり
生成AI時代を語る前に、あらためて従来のSEOが持っていた強みを整理しておくことも重要です。SEOは一時的な集客施策ではなく、長期的な視点で見たときに、非常に合理的なマーケティング手法として機能してきました。
高い費用対効果
まず大きなメリットとして挙げられるのが、費用対効果の高さ。広告のようにクリックごとに費用が発生する仕組みではないため、一定の成果が出始めると、継続的に見込み客を獲得できる点が特徴です。初期投資や運用工数は必要ですが、長期的にはコストを抑えながら安定した集客が見込めます。
ターゲット精度
次に、ターゲット精度の高さもSEOの強み。検索という行動そのものが「課題や関心の顕在化」を意味するため、適切なキーワード設計ができていれば、ニーズの高いユーザーに直接アプローチできます。興味関心が曖昧な層に広く配信する施策(広告など)と比べ、無駄が少ない点は大きな利点です。
持続性と資産性
また、SEOで作られたコンテンツは、持続性が高く、資産として積み上がるという特徴もあります。一度評価された記事やページは、短期間で消費されることなく、時間をかけて検索流入を生み続けます。これは、キャンペーン型の施策にはないSEO特有の価値と言えるでしょう。
測定・改善が容易
さらに、測定と改善が比較的容易である点も見逃せません。検索順位、クリック率、流入キーワード、滞在時間など、多くの指標をもとに改善点を把握できるため、感覚ではなくデータに基づいた運用が可能です。この「改善しながら育てられる」性質が、SEOを長く使われてきた理由の一つでもあります。
さらに強力に!生成AI時代のSEOメリット
ここからが本題!AI時代だからこそ、従来のSEOが持っていた価値は形を変え、むしろ強化されている側面も見えてきています。代表的なメリットを、順に見ていきましょう。
①上位表示という「ブランド」に加え、AIに引用されるという「ブランド」
検索結果で上位表示されているという事実は、それ自体がユーザーにとっての信頼指標として機能してきました。「上に出てくる=多くの人に読まれている、信頼されている」という認識は、今も大きく変わっていません。
さらにAI時代では、これにもう一つの価値が加わります。複数の海外調査によると、検索結果で上位に表示されているウェブページが、「AI Overviews」や生成AIの回答に引用される確率は、およそ30〜50%に達するとされています。
つまり、適切なSEO対策を行うことで、「検索上位というブランド」に加え、「AIに引用される情報源」という新たなブランドを同時に獲得できる可能性があるのです。
②ロングテールキーワードの増加と価値の向上
近年、生成AIや自然言語処理の進化により、検索クエリはより具体的で文脈を含んだものへと変化しています。その結果、ロングテールキーワードの種類と重要性は、以前にも増して高まっています。
ロングテールキーワードの大きなメリットは、コンバージョン率や読了率が高い点にあります。これらの検索は、情報探索の初期段階ではなく、すでに課題を整理し、深掘りや判断を行う「探索の2〜3ステージ」に位置するケースが多いためです。商品やサービスを扱う場合でも、購入や問い合わせに近いユーザーが集まりやすくなります。
一方で、ビッグキーワードは検索ボリュームこそ多いものの、漠然とした興味段階の検索であることが多く、比較や検討に至らず離脱するケースも少なくありません。E-A-Tの観点からビッグキーワードを狙いにくいサイトにとっては、ロングテールキーワードでのユーザー獲得チャンスが広がっていると言えます。
また、ビッグキーワードのCTR低下やカニバリゼーションを恐れ、1本の記事に情報を詰め込みすぎた結果、読み切れない膨大なコンテンツになるケースも見られます。その場合、あえてロングテールキーワード単位で切り分ける戦略も、現実的な選択肢の一つです。
③「人間らしい一次情報・独自洞察」の資産価値が高まる
AIが一般的な定義や概要を即座に提示できるようになった今、相対的に価値が高まっているのが、人間にしか書けない一次情報です。成功事例や失敗談、現場での実体験、独自に蓄積したデータや考察などは、AIが簡単に再現できるものではありません。
こうした一次情報を含むコンテンツは、SEO評価の観点だけでなく、AIに引用される情報源としても重視されやすくなっています。結果として、コンテンツ自体が長期的な資産として機能しやすくなる点は、AI時代ならではのメリットと言えると思います。
④作者や企業の観点・世界観に対する興味が生まれやすい
情報探索のハイブリッド化が進む中で、ユーザーは定義や概要を生成AIや「AI Overview」で確認したあと、「その先の視点」を求めてウェブページを訪れるようになっています。
そこで重視されるのが、作者や企業ならではの考え方、問題の切り取り方、世界観だと思います。
③「「人間らしい一次情報・独自洞察」の資産価値が高まる」で触れた、一次情報や独自洞察と組み合わさることで、「この人の考え方をもっと知りたい」「この企業の発信は信頼できる」といった感情が生まれやすくなり、結果としてファンづくりにもつながります。
SEOが単なる集客手段ではなく、認知と信頼を積み重ねる装置として機能しやすくなっている点も、AI時代ならではの変化だと思います。
AI時代のSEOメリットを享受するためには
ここまで見てきたように、生成AI時代においてもSEOは有効であり、むしろ活かし方次第でその価値は高まります。ただし、従来と同じ発想のままでは、そのメリットを十分に享受することはできません。重要なのは、考え方と取り組み方を少しアップデートすることです。
ロングテール戦略を検討
まず欠かせないのが、ユーザーの悩みや「知りたい」「不安」といった感情を的確に捉えたロングテール戦略です。漠然としたビッグキーワードを追いかけるのではなく、検索の背景にある具体的な状況や判断フェーズを意識し、問いに真正面から答えるコンテンツを積み重ねていくことが、AI時代のSEOではより重要になります。
一次情報の提供を心がける
次に意識したいのが、一次情報の提供です。現場での経験、実際の支援事例、失敗から得られた学びなど、自らしか持ち得ない情報は、SEO評価の観点でも、AIに参照される可能性という意味でも、価値が高まり続けています。一般論の整理だけでは差別化が難しい今、一次情報は大きな武器になります。
世界観とインサイトを提供を心がける
さらに、世界観やインサイトの提示も欠かせません。単なる情報の羅列ではなく、「なぜそう考えるのか」「どういう視点で見ているのか」といった観点を示すことで、読者はその発信者や企業に興味を持ちやすくなります。情報探索のハイブリッド化が進むほど、この部分がファン化や信頼形成につながりやすくなります。
AIを活用
そして最後に、AIの活用方法です。AIはコンテンツを大量生産するための道具というよりも、裏付けとなるデータを整理したり、論点を洗い出したり、ユーザーに提供できるインサイトのヒントを得るための補助役として使う方が効果的です。
文章表現の調整やリーダビリティの向上など、人が伝えるべき価値を際立たせるためにAIを使うことで、SEOとAIは競合ではなく、補完関係になります。
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生成AIの普及により、情報の集め方や検索体験は確実に変化しています。その中で、SEOが以前とまったく同じ形で機能し続けるわけではありません。しかし本記事で見てきたように、SEOが担う役割は失われたのではなく、むしろ価値の所在が明確になったと捉える方が自然だと思います。
検索上位という信頼の獲得、AIに引用される情報源としての存在感、ロングテールを通じた精度の高いユーザー接点、そして一次情報や独自視点による資産形成。これらはいずれも、AI時代だからこそ意味を持ちやすくなったSEOのメリットです。
重要なのは、SEOを「順位を取るためのテクニック」として扱うのではなく、ユーザーの疑問や不安に向き合い、自分たちの言葉と経験で価値を積み重ねていく手段として捉えることです。
生成AIと検索が共存する今、SEOは決して万能ではありませんが、正しく向き合えば、今後も十分に活用できる選択肢であり続けると思います。

